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仮想通貨、市況低迷から光明は差すか?

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テクニカル分析編 Vol. 1~市況低迷から光明は差すか?~

株式会社クリプタクト 代表取締役 斎藤 岳
2018年11月27日作成

2018年は仮想通貨の投資家にとって、逆風の多い投資の困難な時期となりました。直近ではBCHの分裂問題が生じて以降、マーケット全体が一段と下落しております。そこで、投資家の皆様の参考になるような情報を提供したく、当社で仮想通貨の市場分析を行うことにしました。今後、このようなマーケットレポートを定期的に配信したいと考えております。

今回の結論

  • BTC価格はさらに15%近いダウンサイド(36万円)はあり得る
  • 一方で、今後12か月の下値は限定的で底値反転の時期が近い推察。
  • 市場の落ち着きと共に中期的には、2017年12月につけた高値を目指す可能性も
  • 鍵となるのはボラティリティ。足元、急速に高まったボラティリティが再度落ち着いたタイミングが、底値からの反転の時期。目安は今後2-3か月と推察。

分析チーム

当社の創業メンバーで行いました。前職では資産70億ドル(8,000億円)超のグローバルヘッジファンドの運用担当者でして、そこで行っていた分析・評価方法を用いたいと考えています。

手法

今回はテクニカル分析を行いました。仮想通貨の市場形成はテクニカル面の要素も非常に大きいためです。テクニカル分析とは、いわゆる価格チャート、需給、ボラティリティや各アセットの価格相関等、をベースとした分析となります。逆に、例えば各通貨のハッシュパワー、ノード数、取引出来高、決済(利用)高、通貨の分裂や規制含めその他イベントなどをベースとした分析(ファンダメンタル分析と呼ばれます)は加味されません。これは、テクニカル分析は、ファンダメンタルの側面を省略するというより、むしろ「ファンダメンタルも大局的にはテクニカル指標に含まれ収斂する」という思想に基づいているためです。

よく、テクニカルは短期、ファンダメンタルは中長期にあてはまるといわれますが、一方で株式市場でも中長期においてテクニカルがファンダメンタルより意味を持つケースも多々あり、無視できない分析となっております。

第1回目では、ビットコイン(BTC)について、過去の市場に基づいたなるべく平易な分析を行いました。今後より深堀りした分析を配信します。同時に、数年という単位では当社でもファンダメンタルの要素が強くなると考えているため、ファンダメンタル分析も今後行いたいと思います。

市場低迷は過去に何度もあった ~乗り越える度に市場は巨大化へ~

図表1は、2013年12月から2017年1月までの日次BTC価格とその30日ボラティリティ(年換算)を表しています。2013年12月16日のBTC価格を100とした場合に、この価格を日次で超えたのが2017年1月2日でした。なお、2014年2月にMt. Gox社が法的整理に入りました。図表1:BTC価格とボラティリティ(2013年12月から2017年1月)当社調べ

図表1:BTC価格とボラティリティ(2013年12月から2017年1月)当社調べ

この市場低迷期では、2013年12月につけた高値に回復するまでに3年を要しました。ただ、底値を付けたのは13か月後の2015年1月で、高値と比較して82.3%下落しました。一方でボラティリティは、市場低迷に入った時期が最も高く、その後8か月くらいかけて低い水準で安定しておりましたが、2014年12月以降に2度目の急上昇があり(図表1の赤枠)、同時期にBTC価格は底値まで下がりました。

なお、ボラティリティとは価格の変動性を表したものであり、詳細は省きますが年間365日取引のあるBTC市場では、ボラティリティが例えば18%というと、約1%毎日上下に価格変動するということを表しております。よって図表1ですと、2013年12月にはボラティリティは最高250%あったため、当時は毎日(250/18=)14%上下に価格変動するマーケットでした。

図表1の期間全体でみると、ボラティリティは平均して25%から100%の間で変動しております。つまり、市場が落ち着いているときはおよそ(25/18=)1.4%毎日変動し、値動きの激しい時期では(100/18=)5.5%の価格変動が毎日ありました。

なお、図表2は2011年8月27日から2012年7月18日、図表3は2013年4月9日から2013年11月5日までの市場低迷期を表しています。これらは前回や今回の低迷と比べてかなり短期間で高値に戻しましたため、比較対象として必ずしも近いものではありませんが、2度目のボラティリティ急上昇のタイミング(図表3の期間では1度目は緩やかでした)で、それぞれ底値(図表2の期間で最大75%下落、図表3の期間で71%下落)をつけました。図表2:BTC価格とボラティリティ(2011年8月から2012年7月) 当社調べ

図表2:BTC価格とボラティリティ(2011年8月から2012年7月) 当社調べ

図表3:BTC価格とボラティリティ(2013年4月から2013年11月) 当社調べ

図表3:BTC価格とボラティリティ(2013年4月から2013年11月) 当社調べ

This time is different? ~歴史は繰り返す~

次に図表4は、直近のBTC高値である2017年12月16日の220万円を起点として、現在までの価格とボラティリティの推移を表したものです。図表4:BTC価格とボラティリティ(2017年12月から2018年11月) 当社調べ

図表4:BTC価格とボラティリティ(2017年12月から2018年11月) 当社調べ

期間は図表1と比較しやすくするため、同じ期間とっております。ご覧のとおり、価格とボラティリティの関係は、これまでの11か月間は図表1に近い動きをしています。主なポイントは下記2点です。

  1. 起点から2-3か月で一度つけた底値を支えとして、半年以上横ばい~レンジでの動きだったのが、起点12か月前後のタイミングでさらに価格は下落始めた。
  2. 起点から下落傾向であったボラティリティが、半年後にいったん上昇し、その後再下落してから、起点12か月前後のタイミングで急上昇始めた。

1について、今回の市場低迷期においての底値は、執筆時点で2018年11月24日につけており、2017年12月16日の高値価格と比べて、80%下落した価格となっています。これは前回の低迷期の82%と比較してほぼ同じ水準まですでに下落しておりますが、前回の底値を意識するなら2%ほどの下落の可能性(現在の価格からみるとおよそ15%の下落、価格にして36万円付近)があることを示唆しております。

一方で、2の視点から、底値のタイミングもまた近いことが示唆されると思われます。ボラティリティの動きが前回と似ていることから、現在起きているボラティリティの上昇は、株式市場でいうところの、いわゆるセリング・クライマックスに近い可能性があり、その場合はボラティリティの落ち着きと共に底値からの反転 が生じると考えられます。

ボラティリティとは非常に回帰性の強いものであり、一方向で上がり続けるということは考えられません。よって、必ず落ち着き始めるタイミングがあります。そのタイミングを当てるのが難しいわけですが、前回は2か月かけてボラティリティは戻りました。その後底値からの反転が始まり、2年かけて高値を更新しました。

一方で、以下は前回の市場低迷期との比較で異なる点です。

  1. 市場が再クラッシュするタイミング(ボラティリティが急上昇するタイミング)が2か月ほど早い
  2. ボラティリティの水準が前回時より低い

2については、市場参加者増え、その厚みが増すことで、BTCのボラティリティ自体が低下していると考えられます。本来これは1つの資産としては好ましいことであり、過去の市場低迷期を乗り越える度に、BTCは市場の厚みを増し、ボラティリティが下がり価格は上がるということを繰り返していることがわかります。

1については判断が難しいです。仮想通貨市場はテクニカル分析での取引が非常に多いため、過去の市場低迷期における下落率から判断した売り取引の加速、いわば自己実現的な取引が早めに生じている可能性もありますし、一方でボラティリティ自体は前回時より下がっていることから、短期的なより大きなボラの上昇がこれから生じる(=マーケットのさらなる下落)可能性もあります。

そこで、投資戦略としては、正確にボラティリティの落ち着く時期を当てる必要は必ずしもなく、中長期的な視点で、ボラティリティが落ち着きを取り戻すことを確認してから投資判断すればいいと考えられます。当社ではボラティリティの落ち着きには2-3か月要するとみています。

今回注目したBTCのボラティリティについても、サービスサイトにて表示していきたいと思いますので、ぜひ投資の参考としてご確認下さい。

なお、仮想通貨の損益通算ツール「クリプタクト」が運営している当ブログでは仮想通貨に関連のある用語やニュースについて解説する記事を定期的に公開しています。最新情報が知りたい方はクリプタクトに登録すると受け取れるメルマガの登録や公式Twitterアカウントをフォローしてみてください。