昨夜の米国株式市場は5月以来の値下がり率で昨年10月以来の50日平均に対する下落を記録。先日S&P500の「立入禁止線」を紹介したばかりだが、早速この水準を割り込んだ。引けに向けて米株らしく押し目買いが入ったが、引け値は今月初めの最高値から約4%下落。

原因はいうまでもなく中国恒大集団(エバーグランデ)だが、何カ月も恒大の状況を紹介してきた身としてやや不思議と思いつつも、こういう局面の相場はいつも織り込み度合いが判断しづらい。恒大の話は先日のモーニングコメント、ツイッター、弊社ユーチューブで紹介しているので昨日まであったことの説明を割愛。

過去24時間でメディアやニュースで良く「これはリーマン級の危機ではない」というフレーズを見かけた。それは無論そうであって、エバーグランデ級の危機である。危機はそれぞれ異なる特徴を持ち、リーマンで起きたことだけに注目して今回の危機を理解できないであろう。不動産の証券化商品の爆発ではなく、これまでそれを許さなかった国においてGDPの1/4を占める産業における連鎖リスクと社会秩序の崩壊が目の前に起きている。

恒大を救済することにより習近平政権が掲げる格差是正の目標が著しく損害される。同社をやり玉に上げなければこれまでの規制強化の効果が問われる。と同時に救済しなければ中国が最重要視する平和的な社会秩序が危うくなるであろう。

欧米の多くの市場参加者は救済を期待し、制御不能な連鎖破綻を想定してないだろうが中国の政策目標に株価上昇が明らかに含まれてないので相手の思惑が理解できていないリスクが大いにある。

本来であれば今週のFOMCとテーパリングに対するメッセージが注目されるはずだったが、恒大が乱入してきたことにより株高が大好きなパウエル議長が躊躇う可能性がかなり高まったと考えられる。そうすることにより、テーパリングを開始する機会を見逃し、今後より重大な政策運営ミスを起こしやすくするであろう。

主要市場の動き

  • ダウ 33970.47 (-1.78%)

  • S&P 4357.73 (-1.70%)

  • NASDAQ 14713.90 (-2.19%)

  • FTSE 6903.91 (-0.86%)

  • 米国10年金利 1.3107 (-0.0509)

  • 原油 72.29 (-2.33%)

  • ビットコイン 4735902円 (-8.54%)